• 日中中心に53年!激変そして変化とともに!中小企業等のコンサル業務に特化、また東京都日中・経済ビジネス委員長として、更にBizを展開~同時に地方創生、訪日IB促進に取組む~代表取締役秋澤文芳

    会員の皆様そして日中関係者各位

    現在、  都日中特任顧問として活躍をされている各界を代表する方々の中で、今回、岡田充氏の発表している論壇・論説seriesのなかで「海峡両岸論」の一部を次のとおり掲載・紹介いたします。岡田氏は、昨年夏にも都日中Online講演会でも発表されています。

     台湾有事を念頭に、日米共同「戦争シナリオ」が・・・。

    日米両政府は1月7日の外務・防衛閣僚による日米安全保障協議委員会(「2プラス2」)で、台湾有事の初期段階に米海兵隊が自衛隊とともに南西諸島を「機動基地」として使い、中国艦船の航行を阻止する「共同作戦計画」推進にゴーサインを出し、日米首脳会談(同21日)もこれを追認した。菅義偉前首相とバイデン大統領が、昨年4月の日米首脳会談で「台湾有事」に向けて日米安保を「地域の安定装置」から「対中同盟」に性格変更してからわずか1年足らず。憲法違反の疑いが濃厚な共同作戦計画という「戦争シナリオ」が、野党の反対や議論もなく独り歩きする日本の現状は、戦争に近づく危険に満ちている。

    「共同作戦計画」といっても、あまり聞き覚えはないと思う。それもそのはず、「2プラス2」を受け、「沖縄タイムス」「琉球新報」の沖縄2紙を除けば、全国紙の大半は「日米連携、踏み込んだ形」「日米、同盟強化で中国牽制」(「朝日」1月8日朝刊)などと書くだけで、共同作戦計画の詳細には触れていないからだ。
    しかし「計画」を放置すれば、戦争放棄をうたった憲法に沿う「専守防衛」政策が、根底から揺らぐ恐れがある。「スルー」するわけにはいかない。1月7日の「2プラス2」からの展開を振り返り、何が問題なのか精査したい。
    岸田の外交姿勢については、昨年11月の第2次内閣発足以来、安倍晋三元首相ら自民党右派が集中攻撃を浴びせてきた。まず、安倍の反対を押し切って、外相に林芳正氏を据えたこと。バイデン政権が開いた「民主主義サミット」
    注1 や北京5輪への「外交的ボイコット」への対応は、のらりくらりとし安倍との「溝」がささやかれた。
    しかし年が改まり「2プラス2」が開催されると、「対中同盟」に変質した日米同盟で中国を軍事抑止しようとする安倍・菅路線を継承・加速する姿勢を鮮明にした。首脳会談では、「核廃絶」に関する日米共同声明を敢えて発表し「ハト派色」を見せようとした。しかしそんなイメージ作戦の陰から対中タカ派の「素顔」がくっきりと表れたのである。

     半分は中国問題論議
    バイデンとの首脳会談は、岸田が訪米による実現を強く希望していた。しかしバイデンが、コロナ対策予算をめぐって民主党上院議員の造反に遭い、7%ものインフレ高進など内政処理に忙殺されて実現せず、結局オンライン会談になった。まず会談内容を振り返る。
    1時間20分の会談の新たな合意点は①「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向け、日米豪印(クアッド)首脳会合を今年(2022年)春までに開きバイデンも出席、②経済安全保障について緊密な連携を確認、閣僚レベルの日米経済政策協議委員会(経済版「2プラス2」)を設立―の2点だった。
    首相側近によると、会談の半分は中国政策に費やされた。そこで、対中政策で何が合意されたのかをまとめる。外務省の発表によると、両首脳は①東シナ海や南シナ海における一方的な現状変更の試みや経済的威圧に反対、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調し、両岸問題の平和的解決を促す、③香港情勢や新疆ウイグル自治区の人権状況について深刻な懸念を共有―で一致した。

    この3点は、2021年4月の菅、バイデン首脳会談の合意内容を「上書き」したもので、新味はない。政権が変わっても外交政策は継承するのが、国家間の基本的取り決めである以上、岸田が日米同盟と対中政策で安倍路線を「継承」するのは当然と言える。継承しなければ大ニュースになる。
    問題は「継承」だけでなく、それをどう発展させたかであろう。そこで、安倍路線をどう「加速」したかをみよう。

     計画内容に口ごもる外務・防衛相
    このうち「『2プラス2』の共同発表の支持」という表現こそ、日米の制服が策定してきた「共同作戦計画」のゴーサインを意味する。共同発表は、計画には直接触れず、代わって「同盟の役割・任務・能力の進化及び緊急事態に関する共同計画作業についての確固とした進展を歓迎注2 という表現を使っている。日米専門家は「共同計画作業」の具体案が共同作戦計画だとみる。
    林外相と岸信夫防衛相は終了後の記者会見で、「共同計画作業」が何を指すのかとの質問に対し「相手がある事なので」「答えられない」と口ごもり、明らかにしなかった。
    計画策定のスタートは、「台湾海峡の平和と安定の重要性」を52年ぶりに文書に盛り込んだ昨年3月の日米「2プラス2」と、菅・バイデン首脳会談まで遡る。岸防衛相はオースチン米国防相との協議で「(台湾)有事で日米の緊密連携」を確認し、「台湾支援の米軍に自衛隊がどう協力するか検討する」と約束した。これを機に、制服レベルで計画策定が始まるのである。


     基地自由使用と後方支援が必須
    日米関係に詳しい米国際政治学者、マイク・モチズキ・ジョージ・ワシントン大準教授は昨年5月、著者も参加した「台湾有事」に関するオンライン国際会議(非公開)で、台湾有事に際し、米軍が自衛隊にどのような役割を演じるよう期待しているかを明らかにした。
    彼は、「米国は中国との戦争を望んではいないが、戦争準備が必要という認識で議会は一致している」と米議会の現状を報告。彼を含むワシントンの国際政治と軍事専門家が行った「机上演習」(ウォーゲーム)の結果、台湾有事では、①米軍による在日米軍の自由アクセス②自衛隊の後方支援―がなければ「米軍は中国軍に勝てない」との結論が出たとした。そして、この2条件を盛り込んだ対日要求シナリオの一つとして、「南西諸島での中国艦船の通過阻止とミサイル配備」を挙げたのである。
    彼が挙げた対日要求シナリオ注3 は次の6点だった。

    (1) 在日米軍基地への自由なアクセスと自由使用
    (2) 日本領土内での積極的後方支援(物資・燃料補給、日本の民間施設へのアクセス)
    (3) 在日米軍基地の強化。兵器の迅速な修理と機動能力向上を通じ「米国の接近阻止戦略・戦術」の支援
    (4) 南西諸島での中国艦船の通過阻止とミサイル配備、台湾島嶼部の防衛と情報収集・警戒監視・偵察活動など、自衛隊の防衛力強化
    (5) 米軍事戦略・戦術を直接的に支援する自衛隊の活動(対潜戦、軍用機支援、機雷掃海、台湾付近での水陸両用揚陸の支援)
    (6) 日本版の「台湾関係法」の制定と台湾防衛に対する米国支援の明示的関与。
     こうしてみると(1)から(3)までは、比較的「控えめな」要求のように見える。(6)の「日本版台湾関係法」は、安倍ら自民党右派議員が国会提出を目指している。ただ「台湾有事」に伴う要求というより、平時に成立させるべきシナリオだと思う。
    「自由アクセス」の法的根拠はどこにあるのか。1960年に改訂された日米安保条約第6条の「事前協議」がその根拠。米軍の軍用機や艦船が「戦闘行動」に直接参加するため在日米軍基地を使う場合、日本の「事前同意」が必要と規定する。具体的には①基地使用②核兵器の配備③1個師団(海軍では1機動部隊)の日本への「配置」「配備」―。ここで重要な点は、事前協議の「発議権」は米国にあり日本にはない。平等ではないのだ。
    沖縄や横須賀の米軍基地への「核持ち込み」疑惑は、何度も指摘されてきたが、米国が事前協議を発議したという話を聞いたことがない。「自由アクセス」は1960年以来ずっと事前協議なしに「認められてきた」のであり、「台湾有事」でも協議などしないはずだ。(続)